来 歴


未来へ


私の夏は十年前の夏から曲つて続き
私の秋はあなたの秋でない
その夏私たちの町は遠くまで焼きはらわれ
一本のたのむ木も燃えつくしてから
太陽の木が高くそびえている方へみんなは出かけた
一人があるくと次の一人が後についた
次の季節に向かつての前進ではない
虚しい町からの逃亡はそれ自身虚しいと
その時みんなは知らねばならなかつたが
そのくらい足音に驚いたのは私だけたつたかもしれない
あなたの風景には破壊と屈辱が一枚ずつえがかれ
そのいやに冷淡な目に
知恵のやどる空間はないとおもわれた

今は秋で空は新しい暦の中に甘く熟れ
誰かがあなたの背に
豊饒な罪の衣裳を着せかけている
そして私に問いかけるあなたの声が
底ぬけに明るいのは何のせいなのだろうか
その明るすぎることによつて
悲劇の要素は倍になり
あなたは傷つかぬことによつて
深く傷ついていると知らねばならない
今は静かな秋で太陽の木は赤く実つている
誰も彼も
もつと豪華な罪のために先を急ぐがいい
私は何度も黙つて残されよう
じつにすばやく仮面をつけかえる
狡猾な世界を後から監視しなければならぬから

私には
次の私たちの冬が悲惨な死であるか
清潔な生であるかわからない
私には未来の不幸まで記憶すべき義務はない
何ひとつ見えない空が向うまでえがかれていて
だから私に答えはない
私は遠まきに私をうかがう無数の目を見かえしながら
私の道を歩いて行くところだ

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